「住宅ローンの金利が上昇している!」 ニュースでそんな言葉を聞くたびに、変動金利でローンを組んだ(あるいは組もうとしている)私たちはドキッとしますよね。
これから教育費がかかる子育て世代で資産形成をしていますが、我が家は以前の記事でも書いた通りマイホーム購入勢です。住宅ローンの返済額アップは家計へのダメージの大きい直撃弾です。
今回は、具体的なケースとして 「4500万円を変動金利0.55%で借りた場合」(総額5000万に頭金500万を入れた)を想定し、「もし途中で金利が急上昇したら、毎月の支払いは具体的にどう変わるのか?」 を徹底的にシミュレーションしました。
銀行員があまり詳しく語らない 「数年後に訪れる本当の負担増」と、私たちがとるべき「最強の防衛策」 について解説します。
まずは「基本の返済額」を知ろう(現状維持の場合)
まずは、金利が変わらなかった場合のハッピーなパターン(基本形)を見てみましょう。
借入金額: 4,500万円
金利: 0.55%(変動)
期間: 35年(ボーナス払いなし)
という設定の場合、返済プランは以下のようになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 毎月の返済額 | 117,842 円 |
| 総返済額 | 49,493,766 円 |
| 利息総額 | 4,493,766 円 |
35年間でおよそ450万円の利息。4500万円という大金を借りて、利息が元金の10%程度で済むのは、低金利時代ならではの大きなメリットです。
実は「最初の10年」で勝負は決まっているという事実
「でも、変動金利はずっとこのままじゃないから上がっていくのは怖い!」 と思いますよね?しかし、実は住宅ローンには 「最初の10年で利息の約半分を払い終える」 という特徴があります。
今回のシミュレーションでは、35年間の利息総額(約450万円)という計算でしたが、最初の10年間でいくら支払いになるのか計算すると約215万円となり 全体の約半分の(48%) の利息を払うことになります。
つまり、「ローンの期間はまだ3分の1も終わっていないのに、銀行への『みかじめ料(利息)』は半分払い終わっている」 のです。 この「最初の10年間の貯金」があるため、低金利で住宅ローンをすでに組んで数年経っている人は、多少金利が上がっても、トータルで見れば固定金利よりお得になるケースが多くなると思います。(日本銀行の利上げによって影響を受けますが、多くても年に0.5%や0.75%の利上げで、おそらく1.5%くらいで上げるのを止めるのではないかと個人的には思っています。)
【検証】6年目に金利2.5%へ急上昇したらどうなる?
さて、ここからが本題です。かなり悲観的なシナリオ、「5年間は低金利だったが、6年目に金利が2.5%まで急上昇し、その後完済まで高止まりした」 というケースをシミュレーションします。
多くの銀行には急激な負担増を防ぐ 「5年ルール(5年間は返済額一定)」と「125%ルール(上げ幅は1.25倍まで)」 というものがあります。これが発動するとどうなるのでしょうか。
あまり考えたことがないかもしれませんが、支払額は「3段階」で変化します。つまり、金利が上がったからといって、「毎月の支払額が急に増える」わけではありません。まずは、金利が急に上がる5年目に一度目の負担増がやってきます。
| 時期 | 金利 | 毎月の返済額 |
|---|---|---|
| 当初5年 | 0.55% | 117,842 円 |
| 6年目〜10年目 | 2.5% | 147,302 円 |
| 11年目〜35年目 | 2.5% | 157,634 円 |
本来は15.4万円必要ですが、125%ルールがあるため、この金額に抑えられます。
支払っている金額 = 元本減らす支払い+利息支払い
という計算になりますが、125%ルールや5年ルールで支払い金額が抑えられている分は、未払いの元本 として蓄積されていきます。
ここが重要です。5年ごとの見直し(11年目)で、「10年目で減りきらなかった借金」を残り25年で完済できるよう再計算されます。
125%の上限も関係なくなり、本来必要な金額へ引き上げられます。つまり、段階的に増額のショックがやってくるわけです。
本当のリスクは「総支払額」の激増
このシミュレーションで最も注目すべきは、毎月の支払額(+4万円)ではありません。「35年間トータルの支払額」 の変化です。
当初予定(0.55%継続)の総支払額:約4,949万円
金利上昇(2.5%へ)後の総支払額:約6,321万円
差額(負担増): +1,372万円
金利が上がるとは、こういうことです。 世帯年収の5-7倍程度の住宅ローンを組んでいる家庭であれば、苦しいけれど生活が破綻するほど毎月の支払いが増えるわけではないと思いますが、 「子供の大学費用2人分」や「老後資金」として貯まるはずだった1300万円 が、消えてなくなる。これが変動金利のリアルなリスクです。
私たちが取るべき「最強の防衛策」
「1300万円も損するなんて怖い!やっぱり繰り上げ返済して借金を減らすべき?」 そう思うかもしれませんが、焦りは禁物です。論理的な正解は, 「繰り上げ返済はするな。投資をしましょう!」 です。
戦略①:住宅ローン減税があるうちは「借り得」
住宅ローンを組んだ時期にもよりますが、最初の10〜13年間は「住宅ローン減税(年末残高の0.7%や1.0%還付)」があります。 現在の金利が0.55%なら、「金利(0.55%)< 減税(0.7%)」 となり、借りているだけで実質プラス(逆ざや)になる状態です。この期間に慌てて繰り上げ返済をするのは、みすみす利益を捨てているようなものです。
戦略②:繰り上げ返済資金は「新NISA」へ
減税期間が終わった後、あるいは金利が上昇した時に備えて、「繰り上げ返済用のお金」を準備することは重要です。 しかし、それを銀行口座に眠らせておく必要はありません。
「新NISA」で全世界株式(オルカン)やS&P500などに投資しましょう。
住宅ローン金利: 上がっても数%(悲観シナリオで2.5%)
投資の期待リターン: 年利4〜5%(保守的な想定)
もし住宅ローン金利が2.5%に上がってしまっても、手元の資金が新NISAで年4%以上で増えているなら、「資産運用益でローン金利上昇分をカバーできる」状態 になります。
過去の株式市場の成績からいくともっと高利回りで回る可能性もあり、新NISAを使えば非課税で運用できます。
国の政策で 金利のある世界 に突入していくことは、我々国民個人ではコントロールできません。現状では、金利の半分を払う最初の10年が計画する間に、株式投資のリターンを上回るような利率になることは極めて考えにくいです。
手元に余裕資金があるのであれば、繰り上げ返済ではなく「新NISA」での運用益確保が合理的です。
「ローン返済額が上がったらどうしよう」と悩むエネルギーを、「浮いた利息分をしっかり積立投資に回す」という行動に変える。これが、現代の賢い住宅ローンとの付き合い方ではないでしょうか。