積立投資を始めたころ、こんな疑問が頭を離れませんでした。
「複利って、利息に利息が乗っていくことでしょ?でもインデックスファンドって毎日値段が上がったり下がったりしている。これのどこに"複利"が働いているの?」
銀行預金の複利ならわかりやすい。100万円が1年後に101万円になり、翌年はその101万円に利息がつく——この「増えた分がそのまま次の元本になる」感覚が投資信託だと感じにくいのです。
今日は、この感覚的な「わからなさ」を図で解きほぐしてみます。
1. 複利の本質は「利息がつく」ことではない
まず少し概念を整理します。
複利の本質は「運用益が次の元本になること」です。
銀行預金の場合、利息として現金で受け取るので「増えた利息にまた利息がつく」という流れが見えやすい。でも実は、この構造は投資信託でも全く同じです。
インデックスファンドを買うと、あなたは「口数(くちすう)」を持ちます。この口数は売らない限り減りません。価格が上下しても、持っている口数は変わらない。
- 価格が上がる → 同じ口数でも評価額が増える
- 毎月積み立てる → 新たに口数が増える(安いときほど多く買える)
価格が上がっている状態で翌月分を買うと、「すでに値上がりした土台の上に、新たな元本が乗る」形になります。これが投資信託における複利です。銀行の「利息に利息」と構造は同じで、「値上がり益の上に新たな投資が乗る」に置き換わっているだけです。
2. 図で見る「増えたり減ったりしながら複利が育つ」
以下のグラフで確認してみましょう。毎月3万円を30年間積み立てる3つのシナリオです。
図1:元本のみ・定率運用・変動運用の比較(毎月3万円 × 30年)
※変動ありシナリオは年率リターンが−15%〜+28%の間で変動するが、長期平均は約5%
図2:「複利の正体」を可視化する(定率5%シナリオ)
※青い「運用益」の面積が時間とともに加速度的に広がるのが複利効果
グラフから読み取れることを整理します。
図1のポイント:変動ありシナリオ(橙)は途中で大きく上下しながらも、30年後には定率運用(青)と大差ない結果になっています。価格がジグザグでも、長期では「平均的な複利効果」がしっかり働くことが見えます。
図2のポイント:これが「複利の正体」です。青い「運用益」の部分に注目してください。最初はほとんどゼロに近い薄い青ですが、10年を超えたあたりから急加速して膨らみ始めます。30年後には元本1,080万円に対して運用益が1,300万円超——元本をはるかに上回る利益が「増えた分が次の元本になる」複利の力によって生まれます。
3. なぜ「複利に見えない」のか
ここが多くの人がつまずくポイントです。
銀行預金の複利は「利息が口座に入金される」ので物理的に見えます。一方、インデックスファンドの複利は、評価額の中に溶け込んで見えないのです。
たとえば、こんなことが起きています。
- 1月末に100万円の評価額がある
- 2月に市場が5%上昇 → 評価額105万円
- 3月にその105万円が基準となり、さらに5%上昇 → 評価額110.25万円
- さらに毎月3万円を積み立てているので、「値上がりした土台」の上に追加投資が乗る
この流れは銀行の「元本×(1+r)^n」と全く同じです。ただ銀行は金利が固定なので滑らかな曲線になり、投資信託は市場次第でジグザグになるだけで、「増えた分が次の元本になる」構造は同じです。
4. 「下がったとき」が実は複利を加速させる
もう一つ、直感に反するポイントがあります。
価格が下がっているときの積立は、複利効果を加速させます。
なぜかというと、同じ3万円で「安いときほど多くの口数が買える」からです。
たとえば、基準価格1万円のときに3万円積立 → 3口購入。 基準価格5,000円に下がったときに3万円積立 → 6口購入。
この6口が、その後に価格が1万円に戻ったとき「6万円分」になります。下がっている間に仕込んだ口数が、回復したときに「複利の土台」として機能するわけです。
これをドルコスト平均法といいます。毎月定額を積み立てるという行為そのものが、「安いときにたくさん買う」仕組みを自動的に作り出しています。
我が家もNISAでオルカンを積み立てていますが、コロナショックやその後の乱高下の時期に「やめようかな」と思いつつも続けたことが、結果的に有利に働きました。その話はこちら→新NISAでオルカン積立を続けて分かったこと|Just Keep Buyingという考え方
5. 「複利が見える」チェックの仕方
では、自分の積立で複利が効いているかどうか、どう確認すればいいか。
答えは簡単です。証券口座の**「評価損益」または「運用益」**の数字を見てください。
- 積立元本:毎月3万円 × 積立月数 = あなたが実際に投じた金額
- 評価額:現在の時価
- 評価損益 = 評価額 − 元本
この「評価損益」の数字が、図2の青い部分です。それが現在値として表示されているだけで、「複利効果」そのものです。
長期で積み立てているほど、この評価損益の数字は(上下しながらも)大きくなっていくはずです。それが投資信託における複利の「見え方」です。
まとめ
- 投資信託の複利は「利息に利息」ではなく**「値上がり益が次の元本になる」**こと
- 価格がジグザグでも、長期では平均リターンに対応した複利効果が蓄積される
- 複利の「成長」は図2の青い面積として可視化できる。最初は薄く、時間とともに加速する
- 下落時の積立は「安く口数を仕込む」ことで、その後の複利効果をむしろ高める
- 証券口座の「評価損益」が、あなたの積立における複利効果のリアルタイムの数値
「増えたり減ったりしているのに、本当に複利になっているの?」という疑問が浮かんだとき、図2の青い面積を思い出してください。あの加速度的に広がる青が、時間をかけて育てた「複利の証明」です。