「子ども・子育て支援金」で手取りはいくら減る? 共働き子育て世帯は損か得か、給付と比較して計算してみた

2026年4月から始まった子ども・子育て支援金。年収600万円の会社員で月575円の負担が発生するが、共働き子育て世帯にとって実際に損か得か?6つの給付と照らし合わせてデータで計算する。

2026年4月から、給与明細に新しい控除が加わ流のはみなさんご存知でしょうか。

「子ども・子育て支援金」——健康保険料に上乗せされる形で徴収が始まったこの制度、SNSでは「独身税」「子なし税」と批判が殺到しています。子どもがいてもいなくても一律に取られる、という点が不満の核になっているようです。

我が家は子どもがいる共働き世帯なので、「これって結局、得なのか損なのか?」というのが最初に頭に浮かんだ素直な疑問でした。感情的な議論が多いので、今日はデータに沿って冷静に整理してみます。


1. 「子ども・子育て支援金」とは何か

制度の骨格をシンプルに言うと、少子化対策の財源を社会保険料に上乗せする仕組みです。

従来、少子化対策の財源といえば「税金」でした。しかしこの制度では、税ではなく「社会保険料に上乗せ」という形をとっています。そのため税法上は「税」ではないのですが、実態として給与から天引きされる点では税金と変わらない——そこが「独身税」と呼ばれる理由です。

こども家庭庁によると、2026年度の支援金率は被用者保険(会社員が加入する健康保険)で**0.23%**から始まります。会社と折半なので、従業員の実質負担率は約0.115%。2028年度には0.44%まで引き上げられる予定です。


2. 実際いくら取られるのか

こども家庭庁の試算(令和8年度)をもとに、年収別の月額負担をまとめます。

年収 月額負担(本人分) 年間合計
200万円 192円 2,304円
400万円 384円 4,608円
600万円 575円 6,900円
800万円 767円 9,204円
1,000万円 959円 11,508円

会社員の場合、会社が同額を折半負担しているため、会社の支払い分も含めると上記の2倍が拠出されています。

共働き世帯の場合は2人分の負担になります。 夫婦それぞれが年収600万円であれば、月575円×2人=月1,150円、年間13,800円の手取り減です。

岸田元首相が「500円弱」と発言して問題になりましたが、あれは「全加入者の平均」の数字でした。年収が高いほど負担が増える設計なので、一般的な共働き世帯ではそれより高くなることが多いです。


3. 集めたお金は何に使われるのか

「取られるだけ」ではなく、使途は法律で明確に定められています。主な6つの給付を確認しておきましょう。

① 児童手当の拡充(最も影響が大きい)

  • 所得制限の完全撤廃(高収入家庭にも支給)
  • 支給対象を高校生年代(18歳の年度末)まで延長
  • 第3子以降は月3万円に増額

② 妊婦のための支援給付

  • 妊娠届出時に5万円、妊娠後期以降に胎児の数×5万円(計10万円)

③ こども誰でも通園制度

  • 就労要件なしで保育園・認定こども園等を時間単位で利用可能
  • 専業主婦・育休中でも使える(2026年度から全国実施)

④ 出生後休業支援給付

  • 子の出生直後、夫婦ともに14日以上育休取得で最大28日間支給
  • 育児休業給付と合わせると手取りの10割相当が支給される

⑤ 育児時短就業給付

  • 2歳未満の子を養育するため時短勤務した場合、賃金の10%相当を支給

⑥ 国民年金保険料免除

  • 育児期間中の第1号被保険者(自営業など)の保険料免除

4. 共働き子育て世帯は「損か得か」を計算してみる

こども家庭庁の試算によると、支援金を財源とするこれら6事業により、子ども1人あたり18年間で約146万円の給付拡充が受けられます。既存の児童手当(約206万円)と合算すると、18年間で合計352万円ほどを受け取れる計算です。

一方、負担はどうか。

年収600万円の共働き夫婦(子ども2人)を想定してシミュレーションします。2026〜2028年度は負担率が段階的に引き上げられるため、ざっくり年間平均1万5,000円(2人分)として計算します。

  • 18年間の累計負担:約27万円(2人分、2028年度以降の全額徴収換算)
  • 18年間の累計給付拡充:約292万円(子ども2人分)

数字だけ見ると、子育て世帯にとってはかなり「得」な設計です。特に子どもが多いほど、拡充された児童手当の恩恵が大きくなる構造になっています。

ただし、「子なし・独身世帯は負担だけ」という点が社会的公平性の観点から批判されているのは事実です。この点はデータではなく社会設計の問題で、合理的な正解はありません。


5. 我が家の場合、実際にどう感じるか

正直なところ、我が家にとってはプラスです。

子どもの高校卒業まで児童手当が続く点は、教育費の実態に即した改善です。18歳まで月1万〜3万円を受け取れるのは、塾代・部活・受験費用がかかる時期と重なります。私立高校無償化(2026年4月から所得制限撤廃)と組み合わせると、高校年代の教育費負担がかなり緩和される可能性があります。→ 私立高校無償化の詳細はこちらの記事でも整理しています。

また、「こども誰でも通園制度」は我が家の子どもはもう対象外ですが、これから子どもを持つ世代には大きい。育休中でも保育を使いやすくなることで、親(特に母親)のキャリア断絶リスクが下がります。

一方で、「月575円で何かが変わるのか?」という感覚もあります。社会保険料というのは、少しずつじわじわ上がっていくものです。遺族年金の改悪も記憶に新しいですが(→遺族年金改悪の記事はこちら)、「制度変更のたびに支出が増え、給付は削られる」という傾向に慣れてしまうと、家計防衛の感覚が鈍くなります。

今回の支援金制度は、少なくとも現時点では「使途が明確で子育て世帯に還元される設計」になっています。だからこそ、「本当にその使途で使われているか」を継続的に確認することが、受給者としての最低限の責任だと思っています。

6. 目的達成に対する正しい政策なのか

ただ、少子化対策になるのかどうかを考えると、なぜこんな支援になるのかは納得いきません。

経済的に困窮していて将来に賃金の上昇も見込めない若者は結婚せず、子供もうまない。一方で、経済的に裕福な人は結婚でき、結婚すれば平均1.9人ほどは子供がいる、というのが実態です。)年収300万円未満では既婚率が1割程度なのに対し、年収600万円を超えると既婚率が5割〜6割)

おそらく前者の経済的理由で結婚の選択肢がない人たちに結婚してもらうことが重要だと思うのですが、今回の制度だと一律に所得から天引きするので、結婚して子供のいるお金のある層が得をする仕組みになっているので、格差を広げるだけで子供は増えないのではないでしょうか。

さらに、3人目から給付額が増える仕組みになっていますが、3人以上の子供がいる世帯は、現状では「非常に高所得な世帯」か、あるいは「地方などで親の援助や住居コストが極めて低い世帯」に二極化しています。大学までの教育費が1人2,000万円と言われる中、3人で6,000万円。月3万円(年間36万円)の給付増では、この巨大なコストの穴埋めには到底足りません。結局、**「もともと3人育てる経済力がある世帯へのボーナス」**にはなっても、経済的不安で2人で止めている世帯が「3人目に行こう」と思える決定打にはなりにくいでしょう。

きちんと政策の効果が出たのか評価をしてほしいですし、気がつけば少子化対策じゃない別の政策に予算を使っているなんてことにならないことを祈るばかりです。