「オルカン1本」vs「債券も混ぜた分散」vs「現金」——下落相場が続くと本当に分散投資が有利なのか、ノーベル賞理論とデータで整理する

株価低迷が続くと「やっぱり債券も持つべきか」と迷う。ノーベル賞を受賞したポートフォリオ理論と歴史データを使い、オルカン100%・60/40・現金の3パターンを比較。積立と一括で答えが変わる理由まで整理する。

コロナショックなどいくつか下落を乗り切っているので、かなり強くはなってきましたが、株価が低迷すると、必ずこの問いが頭をよぎります。

「やっぱりオルカン1本じゃ怖い。債券も混ぜておくべきだったか?」

2026年に入ってから関税問題や地政学リスクを背景に、世界的に株価が不安定な時期が続いています。NISA口座の評価額がじわじわ下がるのを眺めながら、「もっとリスク分散しておけばよかった」という気持ちになる人は少なくないはずです。我が家も例外ではありません。

ただ、こういう感情的な「揺れ」のタイミングこそ、一度データと理論に立ち返る価値があります。今日は「オルカン1本/債券混ぜ/現金」の3パターンを、ノーベル賞レベルの投資理論と歴史データで整理してみます。


1. ノーベル賞が証明した「分散の効果」とは何か

まず理論の確認から。

1990年にノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツは、1952年の論文で**「複数の資産を組み合わせると、個別資産のリスクを単純に足し合わせたよりも低いリスクで同等以上のリターンが得られる」**ことを数学的に証明しました。これが「現代ポートフォリオ理論(MPT)」です。

鍵になるのは「相関」という概念です。

  • 正の相関(同じ方向に動く):株Aが上がるとき株Bも上がる → 分散効果は薄い
  • 負の相関(逆方向に動く):株が下がるとき債券が上がる → 分散効果が大きい

株式と国債は歴史的に負の相関(特に景気後退局面)を持つことが多く、だから株に債券を混ぜると「リスクを下げつつ、ある程度のリターンを確保できる」という設計が成り立ちます。マーコウィッツはこれを「投資における唯一の無料のランチ」と表現しました。

これがいわゆる60/40ポートフォリオ(株式60%・債券40%) の理論的根拠であり、長年にわたって機関投資家が採用してきたスタンダードです。


2. 3パターンを歴史データで比較する

では実際のパフォーマンスはどうか。長期データで3パターンを並べてみます。

①オルカン相当(全世界株式100%)

  • 長期リターン(過去30年):年率約7〜8%
  • 最大下落幅:リーマンショック時に約50%超
  • ボラティリティ(標準偏差):大きい

②60/40ポートフォリオ(株式60%・債券40%)

  • 長期リターン:年率約5〜6%(株式より年率2〜3%低い)
  • 最大下落幅:株式単独より概ね30〜50%抑制
  • バランスファンドの標準偏差は、全世界株式の約50〜75%に抑制されるというデータがあります(SBI証券調査)

③現金(タンス預金・普通預金)

  • リターン:ほぼゼロ(インフレ分だけ実質目減り)
  • 最大下落幅:ゼロ
  • 長期的にはインフレに負け続ける

長期20年以上のスパンで見ると、累積リターンでは①>②>③の順が基本です。ただし②は値動きのストレスが大幅に軽減される、という点が①との違いです。


3. 「2022年の衝撃」——分散が効かなかった例外の年

ここで重要な注意点があります。

2022年は、60/40ポートフォリオにとって1937年以来最悪の年でした。米国株式がマイナス19.5%の中、本来クッションになるはずの米国債もマイナス12.9%。株も債券も一緒に沈んだのです。

原因はインフレと急速な利上げです。

通常の景気後退では「株が下がる → 中央銀行が利下げ → 債券価格が上がる」という流れで負の相関が生まれます。しかし2022年は「高インフレ → 急激な利上げ → 株も債券も同時下落」という特殊な状況でした。

重要なのは、これが例外だということです。 (ただ、最近も貴金属の値動きといい、セオリー通りの動きをしない機会が増えてるような気もします。。)

バンガード・グループの調査によると、1976年以降の約50年間で、株式と債券が3年間連続で同時に損失となった例はないというデータがあります。2022年のような同時下落は数ヶ月〜1年単位では起きますが、長期的には相関が逆方向に戻る傾向があります。

では2026年の現在の下落はどのタイプか。株価が下がる原因が「関税・地政学リスクによる景気不安」であるなら、インフレ型より景気後退型に近く、将来の利下げ期待がある——つまり債券のクッション機能が働きやすい環境とも言えます。


4. 積立の期間と、一括投資の場合で「答え」が変わる

ここが最も重要なポイントです。

積立(ドルコスト平均法)の場合

毎月NISAで積み立てている人は、下落相場が「敵」ではなく 「安く口数を仕込める期間」 です。価格が下がれば同じ3万円でより多くの口数が買えます。その口数が回復時に複利として働く——この仕組みは積立投資と複利の記事で詳しく解説しています。

つまり積立派にとって、下落中に債券を混ぜることは、この恩恵を薄める可能性があるのです。安く買える好機を、値動きの小さい債券で半分潰してしまうイメージです。

長期シミュレーションでも、30年積立のケースで一括投資と比較すると損益率は:

  • 30年・一括:中央値で約7.83倍
  • 30年・積立:中央値で約3.47倍

積立はリスクを時間分散する仕組みなので、すでにある程度のリスク平準化がされています。そこにさらに債券を混ぜてリスクを下げると、長期リターンも下がる方向になります。

ただし、上記で30年と書きましたが、低迷しても売らずに積み立て続けて下落から株価が戻るところまで投資を継続した場合である事に注意してください。

まとめると、長期積立派は「今すぐ債券を混ぜるより、オルカン積立を淡々と続ける」が理にかなっています。


すでにある資産(退職金・貯金一括投資)を運用している場合

一方で、一括で大きな資産を投下している場合、下落幅がダイレクトに資産額に影響します。特に「あと5〜10年で使う予定のお金」であれば、株式一本で持つリスクは相当高いと思った方が良いでしょう。

この場合、株式と債券の分散は理にかなっています。リターンは下がりますが、精神的な安定と「使う時に暴落していた」という最悪シナリオを回避できます。

積立(毎月コツコツ) 一括(まとまった資産)
下落相場 安く買える。むしろ追い風 ダイレクトに資産が減る
債券混入の効果 リターンを下げる可能性 変動抑制として有効
推奨 オルカン継続 時間軸・目的で配分を考える

5. 我が家の方針:積立はオルカン継続、手元現金は比率で管理

我が家のNISA積立はオルカン一本で続けています。今の下落局面も特に動かしていません。これは「Just Keep Buying(とにかく買い続ける)」という考え方に基づいていて、詳しくはこちらの記事で書いています。

一方で、手元の流動資産については、大雑把にですが、「生活費の6ヶ月分は現金で確保、残りを長期投資」というルールを守っています。この現金クッションがあることで、相場が下がっても、積立を続けられます。

もし、余裕資金があれば、下落にこそ買う量を増やすくらいです。


まとめ

  • マーコウィッツのポートフォリオ理論(1990年ノーベル賞):分散で「同じリターンをより低いリスクで」実現できる
  • 歴史的に株式と債券は逆相関:景気後退型の下落では債券がクッションになる
  • ただし2022年のようなインフレ型利上げ局面では、株も債券も同時下落する例外がある
  • 積立派(ドルコスト平均法)は下落が追い風。今すぐ債券を混ぜる必要性は低い
  • 一括投資・大きな資産を持つ場合は、時間軸と用途に応じた分散が有効
  • 現金は「守り」ではなくインフレに負け続ける資産。ゼロにはしないが過剰に持ちすぎない

下落相場のたびに「やっぱり分散すべきか」と迷うのは自然な心理です。ただその判断は、「積立か一括か」「いつ使うお金か」によって正解が変わります。相場の動きではなく、自分のお金の使い道を軸に考えることが、長期投資を続けるコツだと思っています。