「夏期講習に通わせたいけど、送迎ができない」——この夏、我が家でまさにこの問題に直面しました。
子どもが小学校高学年になると、受験準備や学力補強のために塾や夏期講習を考える家庭は多いと思います。しかし共働きで、しかも地方在住となると、「誰が、どうやって送り届けるか」という問題が急に壁として立ちはだかります。
よく「小1の壁」と言われる、小学校入学後の保育・学童問題があります。でも私が実感しているのは、その次の段階、**小学校高学年〜6年生の「小6の壁」**とでも呼ぶべき問題です。この壁は「小1の壁」ほど語られていませんが、共働き家庭にとっては同じくらい、あるいはそれ以上に深刻かもしれません。
ファミリーサポートは使えなかった
最初に頼ったのがファミリーサポートセンター(ファミサポ)です。地域の子育て支援として、援助会員が子どもの送迎などを担ってくれる制度で、「塾の送迎もできる」と聞いていました。
しかし実際に問い合わせてみると、制約が多かった。
制約①「到着先での大人への受け渡しが必要」:援助会員が子どもを塾に届けたら、塾側のスタッフや大人が受け取ることが条件になります。塾によっては子どもが直接中に入るだけで「受け渡し」の確認ができないケースがあり、活動として認められないと言われました。
制約②「自治体外への送迎は対象外」:我が家の場合、塾が隣の自治体にあります。ファミサポは原則として同一自治体内での活動が対象で、市区町村をまたぐ送迎は依頼できないと断られました。
制度の趣旨はよくわかります。援助会員の負担軽減と安全管理のための条件でしょう。でも共働き家庭の実態とのずれを正直に感じました。送迎ニーズがある場所(塾)と、ファミサポが使える範囲が噛み合わないのです。
タクシーも現実的ではなかった
次に考えたのがタクシーです。しかし2つの壁がありました。
コスト:塾が自宅から数km離れている場合、往復のタクシー代は1回2,000〜3,000円を超えることも珍しくありません。夏期講習が週5日・3〜4週間続くとしたら、それだけで5〜6万円がかかる計算になります。授業料に加えてこの交通費を払い続けるのは、現実的にかなり重い出費です。
台数不足:地方では、そもそも稼働しているタクシーの台数が少ない。配車アプリに対応していない事業者も多く、急に予約しようとしても車が来ないということが起きます。子どもが授業の終わりに外で待つ状況が生まれることへの不安もあります。
子どもにひとりで通ってもらう——その現実
残った選択肢は、子ども自身に通ってもらうことです。
我が家の場合、自転車で最寄り駅まで行き、電車に乗り、乗り換えをして、最終的に目的地の駅から歩くというルートになります。小学6年生ならできないことはないかもしれません。実際、都市部の小学生は電車で遠くの塾に通うことも珍しくないようです。
ただ、地方のひとり通塾には独特の難しさがあります。
バスや電車の本数が少ない:都市部なら「次の電車に乗ればいい」で済みますが、地方では次の便が30〜60分後ということも。授業が終わる時刻と電車の時刻が合わないと、長時間待たせることになります。
自転車の駐輪と防犯:駅に自転車を置いて電車に乗る場合、帰りに自転車を回収するまでの時間、雨や盗難の問題があります。自転車のルールについてはこちらの記事でも整理していますが、交通量や道路状況が自治体によって大きく異なります。
夜間の帰宅:夏期講習は夕方〜夜の時間帯になることが多く、子どもが暗くなってから電車・自転車で帰宅することへの安全面の不安は拭えません。
「小1の壁」の次にある「小6の壁」の正体
「小1の壁」とは、子どもが小学校に入学すると保育園時代と比べて親の関わりが求められる場面が増え、特に放課後の受け皿(学童保育)が確保できずに親がキャリアを諦めるという問題です。
「小6の壁」は、その続きです。
- 学童保育は高学年になると「卒業」する(多くの学童は3〜4年生で終了)
- 放課後の居場所がなくなる中で、受験対策や習い事の必要性が高まる
- でも子どもを送迎できる大人は平日の昼間にいない
- 頼れる制度(ファミサポ)も、地方では機能しない
この壁は「小1の壁」より社会的認知度が低いため、政策的な支援も薄い。でも共働き家庭が経験している困難としては、同等かそれ以上のリアルな問題です。
地方と都市部の格差も大きい。都市部なら塾のスクールバスや民間の送迎サービス、近距離での選択肢が多い。でも地方では塾自体の数が少なく、通塾手段も限られています。都市部のモデルを前提にした支援策は、地方の共働き家庭には届きにくいのです。
「仕事を辞めるか」という選択肢が浮上する
正直に書くと、この送迎問題を抱えたとき、「どちらかが仕事を減らすか辞めるか」という選択肢が頭をよぎりました。
中学受験を本格的にサポートしようとすると、塾が週4〜5日になり、終了時刻が夜9〜10時になるケースもあります。毎回の送迎に親が関わると、仕事との両立はほぼ不可能になります。
「中学受験のために母親が仕事を辞める」という選択をする家庭は都市部でも一定数います。それはある意味「選択」ですが、地方の共働き家庭にとっては、そもそも「送迎できないと塾に通えない」という交通インフラの問題が先にあります。制度的な話をする前に、物理的に詰んでいる。
キャリアと子育てのジレンマについては以前にも書きましたが、「教育のために親の仕事を諦める」という構造が今も根強く残っていることに、複雑な思いがあります。
現時点でできる現実的な対応
解決策があまりないのが正直なところですが、現時点で検討できることを整理しておきます。
オンライン・映像授業の活用:最も現実的な代替手段のひとつです。通塾不要で質の高い授業が受けられるサービスは増えており、スタサプ・Z会・東進などの映像授業は特に高学年の学習に対応しています。夏期講習の「量より質」という意味では、選択肢として真剣に検討できます。
自宅近くの個別指導塾に切り替える:通塾距離が短ければ、ひとり通塾のハードルも下がります。集団塾より料金が高くなりがちですが、「送迎コスト(親の時間・タクシー代)」を含めた総合比較をすると、近距離の個別指導塾のほうがトータルで安くなることもあります。
GPSとスマホで安全を補う:子どもにひとりで通ってもらう場合、位置情報共有アプリ・キッズスマホ・交通系ICカードの利用履歴確認などを組み合わせることで、親の不安を一定程度軽減できます。
夫婦のシフト調整:どちらかがフレックスや在宅勤務を活用して、送迎を担当できる日を作るという方法。毎日は無理でも、週に一度送迎日を確保するだけで子どもの安心感は変わります。
まとめ
- 「小6の壁」は実在する。小学校高学年になると学童が終わり、塾への送迎ニーズが高まるが、共働きでは対応が難しい
- ファミリーサポートは使えないケースが多い。自治体外への送迎不可・到着先での受け渡し条件など、地方の共働き家庭の実態と制度の設計がかみ合っていない
- 地方ではさらに深刻。タクシーの台数不足・電車の本数・バスのない地域など、交通インフラの問題が制約として加わる
- 「仕事を辞めるか」という選択肢が現実的に浮上する。特に中学受験を考える6年生の時期に集中する
- 現実的な対応は、オンライン授業への切り替え・近距離塾への変更・GPSで安全を補いながらの一人通塾——どれも完全な解決ではなく、折り合いをつけることになる
この問題は個人の工夫で解決できる問題というより、制度・インフラ・職場環境が連動して変わらないと根本的には解決しない構造的な問題です。「小1の壁」が社会問題として認知されてから対策が進んできたように、「小6の壁」もまず言語化して共有されることが第一歩だと思っています。
もし同じ状況で悩んでいる共働き家庭の方がいれば、「それは個人の問題じゃないですよ」と伝えたい記事でした。