「金利のある世界」が本格化する——住宅ローン変動金利の今後シナリオと、子育て世帯が今すべき判断

政策金利が0.75%に達し、2027年末には1.5〜2%到達の予測も。変動金利はどこまで上がるか、繰上げ返済とNISA積立はどちらを優先すべきか。シナリオ別シミュレーションと子育て世帯の具体的な判断基準を整理します。

「変動金利で住宅ローンを借りたけど、これから金利が上がったらどうしよう」——この不安を抱えている共働き子育て世帯は、今や珍しくないと思います。我が家もそのひとつです。

日本はずっと「超低金利の国」でした。でもそれは過去の話になりつつあります。政策金利が0.75%まで上がり、エコノミストの多くが「2027年には1.5〜2%」と予測している今、「変動金利はこれからどこまで上がるのか」「繰上げ返済とNISAはどちらを優先すべきか」を、一度ちゃんと整理しておく必要があると感じています。

今日は「今現在の金利がいくら」という話より、今後どう動くのかのシナリオと、それに応じた家計の判断基準に焦点を当てます。


まず「何が変わったのか」を整理する

日本銀行は2016年から「マイナス金利政策」を続け、政策金利は長らくほぼゼロでした。その後、2024年3月にマイナス金利を解除し、2025年7月に0.25%、同年12月に0.5%、そして2026年3月に0.75% へと段階的に引き上げています。

2026年6月の金融政策決定会合では、さらなる追加利上げが「秒読み段階」と報じられています(モゲチェック・各社報道)。

これは数字の話ですが、意味はとても大きい。2013〜2024年の約10年間、住宅ローンを組んだ人たちが「金利0.3〜0.5%台」という超低金利を当然のものとして計画を立ててきた時代が、構造的に終わりつつあります。


「政策金利がいくらになるか」の3シナリオ

今後の政策金利について、主要機関の予測は以下の3つのシナリオに集約されます。

シナリオA:緩やかな正常化(ターミナルレート1.25〜1.5%)

野村総合研究所は2026年9月に次回利上げ、2027年6月に政策金利1.25%でいったん停止(ターミナルレート)と予測しています。「賃上げと物価上昇が続くが、中東情勢など海外リスクが上げ幅を抑制する」という読み。変動金利への反映は1.4〜1.65%前後が着地点になります。

シナリオB:段階的利上げが続く(ターミナルレート1.75〜2.0%)

野村證券は2026年内に2回、2027年に1回の計3回利上げ(各0.25%)を想定し、2027年6月に1.5%到達と予測。三井住友DSアセットマネジメントは2027年度に1.75%、OECDにいたっては2027年末に2.0% という強気の予測を示しています。このシナリオだと変動金利は2%台前半に乗ってくる可能性があります。

シナリオC:利上げが一時停止・後退(現状維持〜1.0%前後)

中東情勢の長期化や米国経済の減速が日本にも波及し、日銀が利上げを一時停止するシナリオです。現在の変動金利水準(0.9〜1.1%台)から大きく動かないまま2027年を迎える可能性もゼロではありません。

現実的に最も意識すべき幅は「1.5〜2.0%」 です。楽観シナリオCに賭けて何も対策しないのは危険ですが、悲観シナリオBのために今すぐ繰上げ返済を急ぐ必要もない——そういう状況です。


変動金利が上がると毎月の返済額はどう変わるか

政策金利と変動型住宅ローン金利は連動しています。大まかには、政策金利が0.25%上がると変動金利も0.25%程度上昇するイメージです。

借入3,000万円・残35年・元利均等返済の場合、金利別の毎月返済額は以下の通りです(概算)。

変動金利 毎月返済額 現在(1.0%)との差
1.0%(現在水準) 約84,700円
1.5%(シナリオA) 約91,800円 +7,100円/月
2.0%(シナリオB) 約99,200円 +14,500円/月
2.5%(厳しめ) 約106,800円 +22,100円/月

月1.4万円の増加で「子どもの習い事の費用が消える」水準です。「2%になったらどうなるか」を一度数字で把握しておくことには意味があります。

ただし、ここには住宅ローン控除という重要な変数があります。控除期間中(最長13年)は、ローン残高の0.7%が税額から控除されます。繰上げ返済でローン残高を減らすと、その控除額も一緒に減ります。


「繰上げ返済 vs NISA」どちらを優先すべきか

金利が上がり始めると多くの人が「繰上げ返済を急ぐべきでは?」と考えます。でも実際はもう少し複雑です。

判断の軸はシンプルで、「ローン金利」と「投資の期待リターン(年利)」のどちらが大きいかです。全世界株式インデックスの長期期待リターンは年率4〜7%程度とされています(MSCI ACWI、過去20年平均)。

住宅ローン控除期間中(借入から10〜13年以内)

この期間はNISAを優先するのが合理的です。

たとえばローン金利が1.5%でも、控除0.7%を差し引いた「実質コスト」は0.8%。一方、全世界株式への積立投資の期待リターンは4〜7%。利回りの差が大きく、繰上げ返済は「もったいない」選択になりやすい。

家族のNISA戦略について以前整理した記事でも触れましたが、住宅ローン控除期間中はNISA枠を最大活用しながら、繰上げ返済は控除が切れた後に集中させるのが王道です。

控除期間終了後(借入から13年超)

控除がなくなると、ローン金利がそのままコストになります。

変動金利水準 判断の目安
1.5%未満 NISA(積立投資)を優先。利回り差が大きく、投資が合理的
1.5〜2.0% バランス型。繰上げ返済も並行しながら積立を続ける
2.0%超 繰上げ返済を強化。確実な「利息削減」の価値が増す

モゲチェックの塩澤氏も「インフレ時代は繰上げ返済より資産運用を優先すべき」と述べており(野村ウェルスタイル、2026年)、現在の金利水準(〜1.5%程度)ではNISAを止めてまで繰上げ返済に集中する必要はない、というのが多くの専門家の見解です。

ただし「心理的安心」は数字では測れない

「ローンを早く返して安心したい」という感覚は、それ自体に価値があります。金利が2%になっても「ローンなし」の安心感のために繰上げ返済を選ぶ人がいるのは合理的です。ただ、少なくとも「数字を把握した上での選択」と「なんとなく不安だからの選択」は分けて考えたい。


変動 vs 固定——今から借りる人、借り換えを検討する人へ

今後の住宅購入・借り換えを考えている人への補足です。

変動金利のメリット・デメリット

  • メリット:今の金利は固定より圧倒的に低い(主要行最優遇0.9〜1.1%台)
  • デメリット:今後の金利上昇リスクをすべて借り手が負う

固定金利(フラット35)の現状

長期国債利回りの上昇を受けて、フラット35の金利は2026年に入ってから上昇傾向が続いています(2026年5月時点で2.0%前後)。三井住友DSアセットマネジメントは10年国債が2031年に3%近傍まで上昇する可能性を指摘しており、固定金利もこの水準を反映して上がっていく見通しです。

「今のフラット35の固定金利2%は高い」と感じるかもしれませんが、「5年後に変動金利が2%を超えているリスク」と天秤にかけると、固定で確定させておく判断も合理性を持ち始めています。


子育て世帯としての「やるべきこと」リスト

金利シナリオを踏まえた上で、子育て世帯が今やっておくべきことをまとめます。

① 今すぐ:残高・金利・控除残期間を確認する

毎年10月〜11月に届く「住宅ローン残高証明書」と確定申告の「住宅借入金等特別控除計算明細書」で、控除残期間と残高を把握しておく。「あと何年で控除が切れるか」を知ることが判断の起点になります。

② 金利が1.5%を超えたら:繰上げ返済の比率を上げる準備をする

今すぐ動く必要はありませんが、政策金利が1.0%を超えてきたら(変動金利は1.2〜1.4%水準)、繰上げ返済の積立を始めておく価値があります。「来たときに動ける準備」をしておくことが大切です。

③ NISA積立は止めない

金利が上がっても、現在の水準(〜1.5%前後)では全世界株式への積立を止めることは合理的ではありません。固定費を見直して、NISA積立の原資を確保することを優先してください。

④ 家計の「金利感応度」を把握する

もし変動金利が2%になったとき、月々の返済額がいくら増えるかを一度計算しておく。「許容できる範囲か」「許容できないなら今何を変えるか」を先に考えておくことで、いざという時にパニックにならずに済みます。


まとめ

  • 政策金利は現在0.75%。野村証券は2027年6月に1.5%、OECDは2027年末に2.0%到達を予測。「上がっていく方向」はほぼ確実視されている
  • 変動金利への影響:シナリオ次第で月々の返済額が7,000〜22,000円上昇する可能性。具体的な金額で把握しておくことが重要
  • 繰上げ返済 vs NISA:控除期間中は明確にNISA優先。控除終了後は金利1.5%を境に判断を変える
  • 固定への切り替え:フラット35も上昇中だが、変動が2%に近づくなら固定確定の合理性が出てくる
  • 今やること:①控除残期間の確認 ②金利1.5%超で繰上げ準備 ③NISA積立は継続 ④金利2%時の返済額を計算して「覚悟」を決める

「金利のある世界」は、これまでの日本では当たり前だった時代への回帰でもあります。怖れすぎず、でも無視もせず——正確に把握した上で、自分の家計に合った判断をしていきましょう。

ライフプランシミュレーションを使って、住宅費・教育費・老後資金のバランスを一度確認してみることもおすすめです。